日銀の国債買いオペがマネーストック増加に繋がらない理由

先日の「日銀がETFの買い入れをおこなう理由」の中で、以下のような趣旨のことをまとめました。

国債購入の場合は、銀行にお金が流れても企業の借り入れが増加しない限りお金の動きが発生しませんが、ETFの買い入れはマネーストック(世の中に出回っているお金の総量)に直結します。

この「国債購入の場合は、銀行にお金が流れても企業の借り入れが増加しない限りお金の動きが発生しません」という部分について、なぜ国債の購入がマネーストックに直結しないのか少し詳しく調べてみることにしました。

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国債とは

国債とは国が発行する債券をいいます。債券とは簡単に言うと「借金」のことを指します。

国は国債を発行することで、国債の買い手(投資家)から資金の調達(借り入れ)をしています。

国債には満期(償還日)が設定されており、満期まで国債を保有していた場合は償還(借金の返済)を受け取ることができます。

国債の引き受けと買いオペ

日銀がマネーストックを増やす目的で、民間金融機関から国債を購入することを「買いオペ」といいます。

日銀が民間金融機関から国債を購入することで、金融機関の資金が増加し、金融機関から企業への融資増加などを通じて市場のマネーストックを増やすことを目的としています。

一方で、日銀が市場を通すことなく国債を購入し、政府に直接資金を提供することを国債の「引き受け」といいます。

日銀の国債引き受けは通貨への信認の低下を招くことから、財政法第5条により原則として禁止されています

デフレ下での国債買いオペ

名目金利と実質金利

金利には「名目金利」と「実質金利」があります。

実質金利は以下のように計算されます。

実質金利 = 名目金利 – インフレ率

例えば、100万円の商品を購入するために銀行から名目金利5%でお金を借りたとします。

年間のインフレ率が+4%だとすると、名目的には1年後の返済で105万円を支払う必要がありますが、100万円の商品の価値は物価の変動に伴い104万円となっているため、実質的には差し引き1万円(5%-4%=1%)の支払いで済みます。

日本のデフレ

その国の経済がインフレかデフレかを測る指標としてGDPデフレーターがあります。

このGDPデフレーターは以下のように計算されます。

GDPデフレーター = 名目GDP ÷ 実質GDP × 100

名目GDPとは、単純に市場価格で評価したGDPであり、実質GDPとは物価の上昇・下落の影響を取り除いたGDPを指します。

GDPデフレーターの値が100以上であればインフレ、100以下であればデフレと判断することができます。


出典:ecodb.net

日本のGDBデフレーターの値は2006年以降100以下で推移しており、GDPデフレーターのみで判断すれば現在もデフレであるといえます。

デフレ下で国債買いオペを実施した場合

現在の日本の政策金利は実質的にゼロ金利であるため、仮にインフレ率がマイナス(デフレ)だとした場合、実質金利はプラスとなります。

実質金利がプラスである場合、企業は金利支払いの負担を避けるため、金融機関からの借り入れを躊躇し、そのため日銀の国債買いオペによる民間金融機関の資金の増加が、企業への融資増加とならずにマネーストックに直結しないと考えられます。

まとめ

結論として、「日本がデフレ期にあり実質金利がプラスである場合は、企業が実質金利の負担を避けるため借り入れを行わず、資金の流れが起きないことがマネーストックに直結しない理由である」といえるかと思います。

しかし、日本のインフレ率はここ数年プラスで推移しており、実質金利もマイナスになります。


出典:ecodb.net

ここ数年のプラスのインフレ率が続けば、企業も資金の借り入れを増加させ結果として市場にも資金が出回り始めるのではないかと個人的には感じるのですがどうでしょうか。。

買いオペにも限界があり、国債の引き受けも考えるべきだという記事などもあり、今後数年で目標とするインフレ率を達成できない場合にも買いオペを続けられるのかという疑問も湧きます。

企業の資金需要が本当に実質金利の負担を回避しようとしているのかについても少し疑問です。

その辺りも今後調べてみたいと思います。

認識に間違いのある箇所などあればご指摘いただけたら幸いです。

参考

ご存知の通り、日本は’97年頃からデフレとなっています。 GDPデフレータではその後今日まで一貫してデフレです。このような環境下、日銀が国債を市中銀行から買ったとしても、市中銀行の日銀当座預金は増えますが、デフレつまりインフレ率が負ですから、実質金利(=名目金利-インフレ率)が高くなり、この高い金利を負担してでも採算の取れる事業(あるいは企業)はわずかになってしまいます。 結局銀行にはカネが溢れるが、実質金利の壁に阻まれ市中の中小企業などの資金欠乏は続き、市中銀行での余剰資金は国債に還流するか、海外の不動産や商品などに投資され、これらの高騰を引き起こします。
出典:d.hatena.ne.jp

デフレの時代は実質金利が上がり、債務の実質価値も増えるそうですが、その理由を具体的に教えてください
出典:manabow.com

国債(こくさい)とは「国庫債券」の略で、国(日本国)が発行する債券となります。債券というのは要するに借金のことで、国債を発行することで、国債の買い手(投資家)からお金を借りています。それに投資をする(国債を買う)のが国債投資となるわけです。

ちなみに、国債や政府機関が発行する債券、地方自治体等が発行する地方債を総称して「公債」とも呼ばれます。このページでは国債とはいったいどのようなものなのかということをわかりやすく説明していきます。
出典:www.national-bond.com

金利には「名目金利[2]」と「実質金利」があり、このことが明確に理解できているか否かで、経済現象の理解に大きな差がでる[3]。名目金利が高いか低いかを判断する場合、物価の変動を考慮しなければならない[3]。
実質金利 = (名目金利)-(予期インフレ率)で表すことができる[1][4][5][6]。この関係を解いたのは、アメリカの経済学者であるアーヴィング・フィッシャーであり、この式はフィッシャー方程式といわれている[4][7]。
例えば、自分が100万円の商品を購入する際の代金は銀行から名目金利5%で借り、物価の変動(インフレ率)が+4%だったとする。1年後の返済で105万円を支払う必要があるが、100万円の商品の価値は物価の変動に伴い104万円となっているため、実質的には差し引き1万円つまり1%の支払いですむ。上記の式で言えば5%-4%=1%となる[4]。
出典:ja.wikipedia.org

日銀の国債買入の限界
出典:blogos.com

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